2019年平成天皇が4月で生前退位され、5月から新しく元号(年号)が変わります。
昭和生まれの私は、3つの時代を体験することが出来ます。
現在では日本が元号を使用する唯一の国ですが、元々の由来は中国です。
五経(儒学の5つの経典)から漢字2文字を選び、構成されていました。
日本での最初の元号は645年、飛鳥時代「大化」となります。
明治の改元時、
「元号が変わる時は、天皇が崩御された時」
つまり、
「一人の天皇に一つの元号」
という一世一元制と定められました。
平成天皇の生前退位は、一代限りで認める特例法により成立したのですが、日本の天皇が生前退位されるのは約200年ぶりのこととなります。
不思議なことに元号が変わると、それに伴って時代の流れも大きく変動します。
そしてその時代の特色や背景が元号と符合していくのです。
新たな時代を前に、暗示や予見をも感じさせる元号と、明治以降それぞれの時代背景を調べてみます。
明治(明るく治める) 1868.1.25~1912.7.30
江戸時代の末期(幕末)に起こった明治維新の改革により、これまで将軍が政務を支配していた幕府から、天皇親政体制である明治政府が築かれました。
これにより武家時代(政権)は終わり、明治天皇は京都御所から徳川幕府の本拠地であった江戸城へと入られました。
江戸は東の京都として東京と改名され、江戸城は東京城として後の皇居となります。
日本の首都が「千年の都」と言われた京都から東京へと、完全に移り変わりました。
明治時代を象徴する言葉文明開化。
西洋のものが普及され始め、皇室や政府の正装、軍人や公的機関の制服などが洋装に定められました。
洋服は、一般庶民にとっての憧れでもありました。
また明治に入ってきた西洋料理の一つに、牛鍋があります。
現在のすき焼きの先駆けともなる牛鍋ですが、家畜を食べる風習がなかった日本人には、抵抗があったようです。
明治天皇が滋養強壮の為に食されたことは、その後の日本の肉食文化に大きく影響したと、いわれています。
しかし、当時の西洋料理は庶民にとってはとても高価なもので、食卓に並ぶには程遠い食事でもありました。
このように明治時代は一世一代の改革で、西洋文化を取り入れた日本が大きく変わろうとした時代です。
新時代へと移行する混乱のなか、明るく国を治めていこうという希望が、込められているように思えます。
大正(大きく正す) 1912.7.30~1926.12.25
大正時代はその期間が15年と短いのですが、この15年間で起きた出来事はその後の日本にとって激動の始まりの時代となります。
順風満帆に文明を開化してきた日本は、世界的にも肩を並べるまでの国になりました。
1914年に始まった、人類最初の世界大戦となる第一次世界大戦で、日英同盟を結んでいた日本は、物資を供給するという形で参戦します。
輸出が急増した日本国では、空前の好景気が訪れます。
これを大戦景気といいます。
そんななか、国民は民主主義的な思想を広げる運動に盛り上がり、その運動は政治や社会、文化にまで発展していきます。
この風潮を大正デモクラシーと言い、後の日本国政府に対し大きなうねりを上げることになります。
大正を象徴する大正ロマンという言葉がありますが、言論や思想の自由と平等を求め始めた国民にとって、まさに大正はロマンある時代でもあったのです。
またその反面、何となく浮かれた調子の波に乗った感のある、時代でもありました。
大正末期1923年(大正12年)には関東大震災が発生。
被害者のうち9割が火災によるものであり、死者の数は10万人をも超える日本史上最悪の災害となりました。
国が大きくなるために正しく政治を行う。
また大きく正さなければまだまだ危うい日本の成り立ちが浮かびます。
昭和(照らし和する) 1926.12.25~1989.1.7
昭和は、日本に限らず世界諸国でも歴史上、最も長く続いた元号です。
そして、この時代の激動は日本のみならず、世界にも影響を及ぼします。
大正時代での大戦景気も、終戦とともに輸出は減り、また大正末期に発生した関東大震災の影響から、昭和の始め日本は金融恐慌に見舞われました。
また冷害で大凶作となった北海道、東北地域の農村では、生活の困窮から娘の身売りが社会問題となりました。
そして昭和時代で最も忘れてならないのが、1939年(昭和14年)に勃発した第二次世界大戦です。
1941年(昭和16年)日本は、ハワイでの真珠湾攻撃にてアメリカに対し、宣戦布告をします。
明治に、天皇親政体制として改革された日本の国民には、天皇陛下は絶対的な存在でした。
「お国のため」
「天皇陛下万歳」
と、大勢の日本兵が天皇の名のもと国に尽くし、戦死しました。
しかし4年に渡るその戦いも、1945年(昭和20年)8月の広島.長崎への原爆投下、及びソ連からの侵略を受け、日本の無条件降伏で幕を閉じます。
敗戦後、日本を戦争へと導いた首謀者たちは、戦犯としてアメリカに処刑されます。
第一責任者であった昭和天皇が、戦犯にならなかった背景には諸説ありますが、終戦後天皇は政治の一切に関わることはなく、日本国民の象徴としてその長い歴史は現在へと継承されています。
1946年(昭和21年)日本国憲法の誕生とともに名称は、帝国主義であった大日本帝国から日本国に変わり民主主義へと移行されました。
終戦後、日本の生産力は極度に落ち込み、物価の上昇と作物不良で生活困窮者が多発しました。
そんななか政党内閣が復活し、制度の見直しから徐々に経済は回復していきます。
1950年(昭和25年)には朝鮮戦争が勃発。
またも物資の輸出が増え、日本は好景気となります。
1954年(昭和29年)大戦終戦後、軍事力をもっていなかった日本には、自国を守るための防衛組織である自衛隊が設けられました。
まだまだ高価であった自動車や電化製品ですが、科学産業の発達で徐々に一般家庭にも普及され始め、高度経済成長の波に乗った日本は、1968年(昭和43年)には世界で2番目の経済大国となり、注目されるようになります。
しかしその一方で、産業廃棄物からの環境汚染が、水俣病やイタイイタイ病など深刻な公害病を発生させます。
これにより1967年(昭和42年)には「公害対策基本法」(平成5年「環境基本法」に統合される)が施行され、守るべき環境基準や排出規制が定められました。
終戦後、何も無くなった日本を急速に蘇らせていった、強く逞しい昭和の人々。
昭和ノスタルジーという言葉があるように、そんな人々の生活と素朴な街並みは、今でも何処か懐かしく風情のある時代でもあります。
間違った思想は、国民の命という大きな代償を払い、公に照らし出されました。
国民の平和が国の繁栄に繋がると、人々が気付いた時代のようにも思えます。
平成(平らに成る) 1989.1.8~2019.4.30
昭和天皇が崩御され時代は平成へと移ります。
平成時代が幕を開けた年、世界の大きな出来事として東西に分けていたドイツベルリンの壁が崩壊。
それに伴い米ソ冷戦の終結が宣言されました。
1990年ではドイツが統一され1991年ソ連が崩壊します。
この歴史的大転換のなか、日本では初の消費税(3%)制度が開始されますが、景気は後退の一途をたどります。
1973年(昭和48年)から続いた経済成長安定期はバブル崩壊とともに終わり、失われた20年と呼ばれる低迷期へと突入します。
平成時代では、大地震を始め極めて多くの自然災害が発生しました。
記憶に新しい東日本大震災では、津波により多くの人命が奪われました。
日本各地で起こる自然災害を目の当たりにして、これから起こりうると言われている災害から命を守るため、私たちの一人一人が防災意識を高めなければなりません。
平成といえば、インターネットの発展時代でもありました。
1990年前後、主に企業に導入され始めたパソコンは、1995年Windows95の出現により使いやすくなり、一般家庭への普及が広がりました。
拡大し続けるネット社会で情報は一瞬にして広まり、私たちは家に居ながらにして、世界の人たちと交流することが可能になりました。
テレビ、パソコン、電話、と特に情報機器はその性能とともに薄型軽量化と進化を遂げています。
そして、地域に一台であった物が一家に一台となり、今では個人に一つが当たり前の時代となりました。
平成に入って経済の泡は弾け、日本各地で発生する災害で再出発を余儀なくされた地域や人々。
そんななかインターネット市場は拡大を見せ、店舗としての建物はなくてもネットのなかで商売が成り立つ時代。
お金でさえ仮想通貨として流通しています。
この目まぐるしく変動していく世の中をフラットに受け止めていかなければ、自分を見失いかねません。
平成に起きた出来事によって無から可能性と創造性が生まれることを知り、真の自分の在り方や生き方に、個人が気付き始めた時代のように思えます。
平ら(フラット)になるがゆえに成就する時代です。
新元号 2019.5.1~
平成で進化したデジタル(データ世界)は、ここ数年でリアル(現実世界)と融合し始めています。
人工知能(AI)を生み出した、最先端テクノロジーの進化は目覚ましく、その勢いは増すばかりです。
将来、人工知能に私たちの職業は奪われる、と言われています。
人の雇用率がどんどん低下していくなか、仕事に対しての私たちの意識にも変革が求められそうです。
明治の改革から150年余りで、日本は全く別の国と言っても過言ではないくらいの変化を遂げました。
2019年春、また新しく時代が動きます。
時代を予見しているかもしれない日本の元号。
「明るく治めて、大きく正し、照らし和すれば、平らに成る」
さてさて、新時代どんな元号が続くのか楽しみです。
<2019.4.1追記:新元号は令和に決まりました>