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古事記

【古事記!面白い神代の話①】宇宙の始まりから天地創造!

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新元号「令和」で一躍有名になった「万葉集」は日本最古の和歌を集めた書物ですが、日本にはもう一つ最古の歴史書といわれる「古事記」があります。

天智天皇の時代、元々あったといわれる「天皇記」など多くの歴史書は、火事によってそのほとんどが失われてしまいました。
そこで弟である天武天皇は、焼けた「天皇記」に変わる国史の編纂を命じられました。

稗田阿礼(ひえだのあれ)は天皇に仕える舎人でしたが、見聞きしたものを即座に記憶し、言葉にするという特性があったので、その記憶力の良さを見込まれ、貴族であった太安万侶(おおのやすまろ)と共にこの編纂を手掛けました。

後に天武天皇の突然の死により中断を余儀なくされましたが、711年元明天皇の命によって再開され、三十年の長き時を経て西暦712年古事記は成立されたのです。

上・中・下からなるこの歴史書は、

  • 「上つ巻」を、天と地と国土の始まり、日本の神代(かみよ)のお話。
  • 「中つ巻」を、初代神武天皇から15代応神天皇までの、神代から人代へ天皇が日本を統治していくお話。
  • 「下つ巻」を、16代仁徳天皇から33代推古天皇までの、人代のお話。

に、構成されています。

主に日本の始まりと天皇の歴史を綴った「古事記」ですが、特に注目されるのが上つ巻神代(かみよ)のお話です。

「神さまなのにそんなことするの?」
みたいなお話がたくさん出てきます。
ある意味人間臭さを感じさせる神さまの振る舞いに、何か親近感が湧いてきます。

そして、真理と推理が混在する、実に興味深い書であることに気付くのです。

造化三神(ぞうかさんしん)

始めにこの世が始まる前、いわゆるビッグバンが起こる前の世界についてです。

その世界は空(くう)の世界です。

空とは仏教の思想ですが、無いのに在る。

また在るのに無い。

それを簡単に我々人間の概念で例えると、真空のツボの中です。

ツボのなかという空間概念は在るが、そこには何もない。

それが宇宙が始まる前の空(くう)の世界。

現代科学でもビッグバンは真空で起きた超大爆発と言われていますが、これはビッグバン前の世界には既にエネルギーが存在していたことを物語っています。

では、古事記に戻ります。

宇宙が始まる前の世界、空(くう)に突如として現れたのは、天之御中主神(アメノミナカヌシ)です。

その誕生と同時に、高天原(たかまはら)<宇宙、天>が展開したのです。

天之御中主神はその字の通り、天の中心の神さまです。
それは宇宙だけでなく、あらゆる原動力全ての中心です。

ビッグバンにより誕生した宇宙のエネルギーは、今でも膨張.拡大しているといわれています。
宇宙の始まりを意味し、全エネルギーの本源を司る神さまです。

アメノミナカヌシは、この世の始まりに一度現れたきり姿を隠された後は、古事記の中に一切登場されません。

それはこの世界の全てのエネルギーの中心には、見えなくても大いなる神が存在していて、その本質は常に隠されているということを物語っているように思えます。

次に時同じくして現れたのが、高御産巣日神(タカミムスビ)です。
別名、高木神(タカギノカミ)とも呼ばれます。

日本の最高神、天皇の皇祖神でもある天照大御神(アマテラス)の孫、瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)が葦原中津国(あしはらのなかつくに)<日本のこと>を統治するため天孫降臨をされた際に、一番熱意をもって指揮されたのがタカミムスビです。
またいつもアマテラスを助け、天の指令は必ずタカミムスビに一度通されることから、本当の日本の最高神.皇祖神はタカミムスビであったともいわれています。
これらからタカミムスビは、天の神、皇祖神でもある高天原系の生成神になります。

この神さまは重力を司り、引き寄せる力で膨張するエネルギーの勢力にブレーキをかけ秩序を保ちます。
この宇宙の全てに、存在と居場所を認める神さまです。
広い宇宙のなか無数にある天体たち同様、この地球もそこに住む私たち一人一人全てが、タカミムスビが存在と居場所を認めた生命なのです。

また時同じくして生まれたのが、神産巣日神(カミムスビ)です。

カミムスビはアマテラスの弟である須佐之男命(スサノオ)が高天原を追放された時、スサノオが殺してしまった穀物の神さま(オオゲツヒメ)から生まれた穀物を回収し、その種を地上に蒔いたとされています。
また兄弟に殺された大国主神(オオクニヌシ)の命を2度にわたって蘇らせ、国造りの際にはカミムスビの息子スクナヒコナにその手伝いを命じます。
そして日本書紀では国譲りの後、出雲大社の造営をカミムスビが全国の神を集め指揮したとされています。
これら記述からカミムスビは、黄泉の国、幽界を含む日本の地の神、出雲系の生成神になります。

この神さまはあらゆる事物を創造する素粒子の元を司り、タカミムスビに認められたエネルギーの存在を形作る力です。
私たち人間の意識にも宿るカミムスビの力は、創造と表現の源なのです。

タカミムスビとカミムスビの「ムスビ」とは、息子.娘の「ムス」であり日本国歌に出てくる「苔の生(む)すまで」の「ムス」でもあります。
生成するという意味があります。
また「生す(ムス)」+「日(ビ)」で太陽神を表すとされています。

高天原から日本の地への進出として、天孫降臨を指揮する男性的要素を含むタカミムスビと、日本の地に穀物の種を蒔き出雲の国を助けたりと、地母神のような女性的要素をもつカミムスビですが、性別をもたない独神でありながらこういった男女像があるのは、象徴.属性の対比としてです。

宇宙は大いなるエネルギーの中心と、この二柱の「結び(ムスビ)」によって存在.創造されているのです。
この世界を創った三柱の神さまたちのうち、一柱でも欠けていたらこの世は成り立たなかったでしょう。

この三柱の神さまを造化三神(ぞうかさんしん)と呼びます。

 

しかし不思議なのが造化三神から語られる、このような宇宙の本質や概念を古代の人がなぜ発想できたのか、ということです。
神さまという存在から本当に語り継がれた証なのでしょうか。
そういった視点を交えると、古事記にはまたさらに違ったミステリー要素が含まれるのです。

 

別天津神(ことあまつかみ)

造化三神が現れた後、水面をクラゲが漂うようなまだ混沌としていた宇宙に現れたのが、次の二柱の神さまです。
この二柱の神さまも独神であり、現れた後すぐにその姿を隠されました。

先に現れたのは生命の元、生命の活力を司る神さま(ウマシアシカビヒコヂ)です。
素粒子を結合させる力で、物事を実現させる法則の神さまです。

そして最後に現れたのは、天之常立神(アメノトコタチ)。
この神さまは高天原に常に存在され、天と地、星と星など、一定の距離感とリズムを保つ法則、天の永続を司る神さまです。

造化三神と合わせこの五柱を別天津神(ことあまつかみ)といいます。




 

神世七代(かみのよななよ)

別天津神である五柱の神さまが現れた後、続いて七代に渡り生まれた十二柱の神さまたちです。

これまでの五柱は、天界の成り立ちや宇宙の法則を現わされた神さまでしたが、この後現れる十二柱は、地上における自然の成り立ちや陰陽の法則を現わされる神さまです。

アメノトコタチに次いで現れたのは、国常立神(クニノトコタチ)です。

天常立神(アメノトコタチ)に対して国常立神(クニノトコタチ)は、国土に常に存在する、国の永続を司る神さまです。
大地を支える根源、地核の性質から「陽」の法則をもつ神さまになります。

次に現れたのは、豊雲野神(トヨクモノ)です。
字の如く豊かな雲を表し、天とはまた違う地に対しての空を司る神さまです。
豊かな雲は雨水となり地上の命を育みます。
そういった性質から「陰」の法則をもつ神さまになります。
これら陰陽の法則をもつ二柱も共に独神で、生まれてすぐ姿を隠されました。

これまでの神さまは全て性別のない独神で、現れてもすぐに姿を隠しました。
しかしクニトコタチとトヨクモノから現れた「陰陽の法則」で、その後次々と男女の神さまが生まれます。
二柱で一代になる神さまです。

泥と土砂を司る土壌の神さま(ウヒヂニと、妹のスヒヂニ)。

土壌に杭を打ち込んだ様子を表す神さま(ツノグイと、妹のイクグイ)

そして、素晴らしい男性、素晴らしい女性という意味の神さま(オオトノジと、妹のオオトノベ)

男女の愛の告白の神さま(オモダルと、妹のアヤカシコネ)

これらペアの神さまには諸説ありはっきりとはしていません。
しかし聖書でも
「アダムは土から作られ、その鼻から神の息を吹き込まれ生命を宿した」
とあるように、生命は土から生まれるという古代の考え方だったのかもしれません。
そういったことから土壌は子宮を、土壌に杭を打つ様は男女の性の交わりを、そして雄(陽)と雌(陰)の本質的な存在から、人間の男女としての相手を敬う精神性の成長を、神格化したものともいえるのです。

そして神世七代の最後、伊邪那岐神(イザナギ)と、妹の伊邪那美神(イザナミ)が誕生しました。

イザナギとイザナミのイザナは「誘(いざな)う」という意味があり、ここに誘い合い結ばれ生みだすという、人間の男女の原型が現れたのです。

 

続きは、古事記②イザナギとイザナミ*国生み.神生み編へどうぞ

 

 



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