古事記③の続き
伊邪那岐神(イザナギ)と伊邪那美神(イザナミ)は結婚して、日本の国土と様々な神さまを生み出しました。
しかし火の神を生んだことで火傷を負ったイザナミは、それが原因で病気になり死んでしまったのです。
イザナミ亡き後も未練が残るイザナギは、黄泉の国まで妻を取り戻そうと迎えにいくのですが、辿り着いた黄泉の神殿で迎えたのは変わり果てたイザナミの亡骸でした。
恐ろしさから逃げだしてしまうイザナギをイザナミは鬼の形相で追いかけます。
イザナギは追ってくるイザナミの行く手を塞ぐと、愛する妻へ決別の宣言をするのでした。
(詳しくは古事記③をお読みください)
目次
禊(みそぎ)から生まれた神さま
鬼に追われ愛する妻と別れ、散々な思いで黄泉の国から生還したイザナギは、死の国で起きた身の穢(けが)れを清めるために、筑紫国の日向(ひむか)橘(たちばな)にある小門(おど)の阿波岐原(あわぎはら)まで趣き、禊を行いました。
禊とは、
罪や穢れを落とし自らを清らかにすることを目的とした、神道における水浴行為である。
この禊の地には諸説あり、地形も変わっていることからはっきりとした地名は不明ですが、現在の日向といえば宮崎県を指しており、宮崎市阿波岐原町「江田神社」の近くにある「みそぎ池」がその地とされています。
江田神社はイザナギが祝詞を唱えながら禊を行ったことから祝詞発祥の地とも言われ、スピリチュアルカウンセラーの江原啓之さんはこの神社について、
「スピリチュアルスポットとして特にパワーのある素晴らしい神社」
と、紹介されていました。
いずれにしても古事記によれば、イザナギが禊を行った場所は美しい入江だとされていて、江田神社のみそぎ池も昔は入江だった地形を開拓して出来たと言われています。

↑江田神社から北に徒歩約5分「みそぎ池」
さて、禊を行うため脱ぎ棄てたイザナギの衣服や装飾品からは、また次々と神さまが生まれました。
- 杖から悪霊を払う神さま(ツキタツフナト)
- 帯から長い道中の安全を祈る御幣の神さま(ミチノナガチハ)
- 袋から時間をはかる神さま(トキハカシ)
- 衣から煩(わずら)いから守る神さま(ワズライノウシ)
- 袴から道案内の神さま(チマタ)
- 冠から食料を心配する神さま(アキグイノウシ)
これら六柱の神は、陸路を司る神さまとなります。
また左手の腕輪からは、
- 沖を航海するための神さま(オキサカル)
- 沖の波を鎮める神さま(オキツナギサビコ)
- 沖の魚を獲るための神さま(オキツカイベラ)
右手の腕輪からは、
- 海岸を航海するための神さま(へカサル)
- 海岸を鎮める神さま(ヘツナギサビコ)
- 海岸の魚を獲るための神さま(ヘツカイベラ)
これら六柱の神は、海路を司る神さまとなりました。
次にイザナギが清流で身体を洗うとイザナギの汚れた垢からは、禍(わざわい)の神さま(ヤソマガツヒ、オホマガツヒ)が生まれます。
そして垢が流されていくと、そこからは禍を鎮める神さま(カムナホヒ、オオナホビ、イズノメ)が生まれました。
続いて誕生したのは、綿津見神(ワタツミのカミ)です。
- 海底を鎮め清める神さま(ソコツワタツミ)
- 海中を鎮め清める神さま(ナカツワタツミ)
- 海上を鎮め清める神さま(ウワツワタツミ)
この三柱でなる綿津見神は、浦島太郎のお話で登場する竜宮城の大王、海神(ワタツミ)となります。
また、イザナギが身体を清められた海水から生まれたのは、
- 海底の神さま(ソコツツノオ)
- 海中の神さま(ナカツツノオ)
- 海上の神さま(ウワツツノオ)
これら航路を司る神さまは住吉三神として住吉大社に祀られています。
身体を洗い清められたイザナギが最後に顔を洗ったところ、
- 左目から太陽の神さま(天照大御神アマテラス)
- 右目から月の神さま(月読命ツクヨミ)
- 鼻から海原(地球)の神さま(建速須佐之男命タケハヤスサノオ)
が、生まれました。
三貴神の特性
これまでにイザナミとともに、日本の国土とたくさんの神々を生み出してきたイザナギでしたが、単身で最後に生んだのがこのアマテラス、ツクヨミ、スサノオの三柱です。
イザナギは、
「私たちの国生み神生みの最後の最後に、他に代えることの出来ない尊い子が生まれた。」
と三神の誕生をとても喜ばれました。
そして、太陽の女神アマテラスには、
「天の国である高天原を治めよ。」
と身につけていた勾玉(まがたま)の首飾りを授けました。
月の神ツクヨミには夜の国。
イザナギから最も最後に生まれたスサノオには海原の国(地球)をそれぞれ任せました。
ここに日本の三貴神(三貴子とも呼ばれる)が誕生したのです。

天照大御神(アマテラスオオミカミ)
三貴神のなか最初に生れた女神アマテラスは、太陽を神格化した天を統治する神さまです。
天皇陛下の皇祖神でもあり、日本で最も尊い神さまになります。
日本各地に天照大御神をお祀りする神社は多数存在しますが、総本社は三重県の伊勢神宮内宮(皇大神宮)であり、そこには三種の神器の一つ八咫鏡(やたのかがみ)が御神体として納められています。
兵庫県西宮市にある廣田神社の主祭神、撞賢木 厳之御魂 天疎 向津姫命(ツキサカキ イツノミタマ アマサカル ムカツヒメ)は、天照大御神の荒魂です。
この荒魂は、封印されし神で知られる瀬織津姫ともいわれています。
荒魂とは神の優しく平和的な側面に対して別の神と見違えるほど荒々しい側面で、神の荒ぶる魂であり、同一の神であっても別の祭神名が与えられたりする。
神道における概念で、神の霊魂が持つ2つの側面のことである。
天照大御神の荒魂であることから、仕事運、勝運、開運、合格などにご利益があります。
毎年、阪神タイガースが必勝祈願の参拝をすることでも有名な神社です。
太陽は世界の、銀河の中心。
地球にとって無くてはならない存在です。
【天照大御神のご利益】開運、強運、福徳、国土安泰、五穀豊穣、子孫繁栄、生命力アップ、心願成就
【神使】ニワトリ
月読命(ツクヨミのミコト)
三貴神二番目に生まれたツクヨミは、古事記においてその記述が少なく、三貴神でありながら最も謎めいた存在です。
月を神格化した神さまではっきりとした性別は不明ですが、名前にミコトとつくことから、男神という見方が一般的になっています。
ツクヨミの月は夜の月でもあり、暦の月でもあります。
日本が新暦(太陽暦)に切り替わったのは明治時代初期の頃で、それまでの旧暦(太陰暦)は月齢を元にした暦でした。
7割以上が水で構成される地球とその生物に、月の引力が強く作用することを、古代の人は知っていたのでしょう。
そのため農業や漁業ではこの月のリズムを読むことはとても重要でした。
そんな月のもつ特性からしてツクヨミは、女性神という考え方も出来ます。(海外では月は女神伝説が多い)
三貴神でありながらツクヨミを祀る神社は少なく、そんな数少ない月読神社の元宮は、長崎県壱岐にある月讀神社で、古くから存在することで知られています。
また、伊勢神宮内宮の別宮には月讀宮が、外宮には豊受大神宮(トヨウケ)の別宮、月夜見宮がそれぞれ祀られています。
(深堀りすると、このトヨウケとツクヨミが同一視される話があります。)
暗闇でしかその存在を主張することのない月ですが、月は地球に大きな影響を与え、生命の繁栄を助けています。
月は陰から支える、まさに縁の下の力持ちなのです。
【月読命のご利益】安産、病気平癒、五穀豊穣、商売繫盛、海上安全、心願成就
【神使】ウサギ
建速 須佐之男命(タケハヤ スサノオのミコト)
三貴神最後、イザナギにとって最後の末っ子スサノオは、まさに末っ子らしいというか最も人間味溢れた神さまです。
父であるイザナギに海原を統治するよう言われたスサノオですが、自由奔放な性格から海原の国からも、後に赴く姉アマテラスの国である高天原からも、追放されてしまいます。
しかしこのやんちゃな末っ子も最後には、出雲の英雄と呼ばれ人々から祀られるようになるのです。
須佐之男命(素盞嗚命)をお祀りする神社も日本各地に存在しますが、天照大御神に比べるとその数は激減します。
まず須佐之男命終焉の地としてお祀りすることで名高い神社は、島根県出雲市にある須佐神社です。
この神社には須佐之男命、妻である稲田比売命イナダヒメノミコト、その父の足摩槌命アシナヅチノミコト、母の手摩槌命テナヅチノミコトの、四柱の神さまが祀られています。
また摂津の国とされる現在の大阪府北中部から兵庫県南東部には何故か、素盞嗚命を主祭神とする神社が多数存在します。
しかしその神社の多くが元々は素盞嗚命ではなく、牛頭天王(ごずてんのう)を主祭神としてお祀りしていました。
牛頭天王とは異国由来の疫病やその他厄災をもたらすと恐れられ、お祀りすることで災いを鎮めるよう信仰された神さまです。
薬師如来(やくしにょらい)と同一視される仏の化身とされています。
千年の間、日本の信仰体系は神仏の融合から生まれていましたが、江戸時代後期からの神道と仏教を明確に区別するという神仏分離令と、国家神道の影響により牛頭天王と素盞嗚命は同一化されるようになりました。
なぜ摂津の国に素盞嗚神社が多数存在するのか、その理由には織田信長が関係しているという説があります。
全国制覇目前の織田信長は、摂津国にある神社仏閣一切を壊そうとしていました。
しかし信長は自らが信仰している牛頭天王を祀る神社には手を出さなかったため、多くの神社が牛頭天王を主祭神として祀り難を逃れたといわれています。
諸説ある牛頭天王なので本当のところは分かりませんが、須佐之男命(素戔嗚命)と同一視されているとはいえ私は三貴神のスサノオと牛頭天王はやはり別物だと思います。
兵庫県西宮市の甲子園球場横にも素盞嗚神社がありますが、こちらも江戸時代までは牛頭天王が主祭神であったようです。
明治初期、主祭神名を素盞嗚命へと改められました。
こじんまりとした小さな神社ですが甲子園神社やタイガース神社とも呼ばれ、選手やファン、高校球児などの野球関連者や他にも勝負事への必勝祈願として多くの参拝者が訪れています。
【素盞嗚命のご利益】縁結び、災難厄除け、学問向上、子孫繁栄、病気平癒、心願成就
【神使】カラス
人としての三貴神
三貴神が生まれた後も古事記には、神々それぞれの物語が展開していきます。
アマテラスとスサノオにおいては、アマテラスの岩戸隠れ、スサノオのヤマタノオロチ退治は有名かと思います。
そしてツキヨミだけは三貴神という尊い神さまでありながら、なぜか物語の記述がありません。
瀬織津姫同様、謎めいた神様です。
さて、さまざまな物語で語られる神さまたちですが、その行動はとても人間臭いものです。
ここからは古事記の物語も含め、私が個人的に感じた三貴神の人物像です😊
【アマテラスさんの印象】
- 明るく朗らか。
- オープンマインド。
- 自分も人も大切にする。
- 天然で悪意がないので居るだけで人を癒す人。
【ツキヨミさんの印象】
- 本心と感情が一致しない。
- ミステリアス。
- 人や物事の隠された部分に敏感。
- 優れた洞察力と共感性で人を癒す人。
【スサノオさんの印象】
- 自由奔放
- 並外れた行動力。
- 結果、現実重視。
- 癒される場所を作り提供する人。
イザナギの体から最後に誕生した尊い三柱の神さまは、三者三様とても個性的な神さまです。
もしかしたら(あの人に似てる)とか(自分に似てる)なんて思うかもしれません。
「尊い神さまも、本質は私たちと同じであり、私たちは神さまの子孫」
この表現は現代では宗教的で受け入れられないかもしれません。
けれど古事記に記される神々が人としてこの地に下り、日本を作り上げてきたという神話同様、私たち人間もこの地に下り今まさに世界を作っています。
そして良き大きな偉業を成し得た人物は、神格化され代々受け継がれていく。
それが神さまなのかもしれません。
個人の性質を三貴神に分けてみてください。
あなたはどのタイプだったでしょうか😊
